浅田次郎 講談社蒼穹の昴

蒼穹の昴(1)

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蒼穹の昴(1)
【発売:2004年10月】

極貧の少年に与えられた途方もない予言 そこに「希望」が生まれた
魂をうつベストセラー大作待望の文庫化!

汝は必ずや、あまねく天下の財宝を手中に収むるであろう中国清朝末期、貧しき糞拾いの少年・春児(チュンル)は、占い師の予言を信じ、科挙の試験を受ける幼なじみの兄貴分・文秀(ウェンシウ)に従って都へ上った。
都で袂を分かち、それぞれの志を胸に歩み始めた2人を待ち受ける宿命の覇道。
万人の魂をうつベストセラー大作!


もう引き返すことはできない。
春児は荷台に仰向いたまま唇を噛んだ。
満月に照らし上げられた夜空は明るく、星は少なかった。

「昴はどこにあるの」誰に尋ねるともなく、春児は口ずさんだ。
声はシャボンのような形になって浮き上がり、夜空に吸いこまれて行った。
途方に昏(く)れ、荒野にただひとり寝転んでいるような気分だった。
「あまた星々を統べる、昴の星か……さて、どこにあるものやら」老人は放心した春児を宥(なだ)めるように、静かに胡弓を弾き、細い、消え入りそうな声で唄った。
<本文より>

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浅田次郎のプロフィール

1951(昭和26)年、東京生れ。
’95(平成7)年『地下鉄に乗って』で吉川英治文学新人賞、’97年『鉄道員』で直木賞、2000年『壬生義士伝』で柴田錬三郎賞をそれぞれ受賞。

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